長崎県佐世保市で税理士事務所をしております西村浩太郎です。
事業所の皆様の日々の財務、労務から複雑な事案のご相談まで、ニーズに合った業務を行うように心がけています。 お気軽にご相談ください。
企業グループ間取引について、目立たないけど気になる法人税法施行規則の改正が行われています。(法人税法施行規則第59条の2) 取引を行う場合は、一定事項が記載された書類を保存しておくこと。 保存しない場合は、青色申告の承認の取消事由等に該当し得るということで、事務担当者は注意が必要です。
1.クループ間取引を行う場合はその取引対価の根拠等を明確に
1-1.対象となる当事者とは
企業グループ間取引(関連者間取引と定義されている)を行う場合には、それが①工業所有権等の譲渡又は貸付、②役務提供に該当する場合には、その明細や内容、対価の額の計算方法等を記載した書類を保存しておかなければならないというものです。
企業グループ(関連者)とは、①直接又は間接に50%以上の株式の所有関係にある親子会社、②一の者により直接又は間接に50%以上の株式を所有されている兄弟会社、③資本の関係がない場合でも、役員の50%以上が兼務している会社、事業に必要な資金の相当部分の借入を受けている等実質的支配関係がある会社も含まれます。
ホールディングスとそこに属する子会社等の大きな企業集団をイメージされるかも知れせんが、例えば個人オーナーが2以上の会社を所有している場合の会社間や、個人とその配偶者、個人の親族等が支配する会社間の取引も範囲に含まれます。親族等の範囲は6親等内の血族、3親等内の姻族、その他特殊関係者まで含まれますので、親戚が経営する会社も該当する可能性が高いので他人事ではありません。
1-2.対象となる取引は
対象となる取引の①工業所有権等とは、特許権、意匠権、商標権、実用新案権等の登録された権利だけではなく、オリジナルの技術、方法、開発したソフトウエア、ノーハウ等を含む総称と考えられます。
②役務提供とは、一般的には、物ではない労働力、技術、便益の提供を言いますがその種類は様々です。 本制度の文脈で理解をするならば、グループ内の関連者が保有する人的、物的、情報的、その他の経営資源を利用して他の関連者の事業活動に必要な管理、指導、支援、情報提供、システム利用、施設や資産の使用又は維持管理等の便益を提供する行為とでも言いましょうか。 総じて考えると、無形の価値や技術、ノーハウ等の産業力を譲渡したり、貸したりすれば、それは工業所有権等の譲渡、貸付であり、売ったり貸したりしないまでも、自らそれらを使って便益を提供すれば役務の提供になります。 工業所有権等の譲渡又貸付と役務提供は別種類ではなく、グラデーションのようにつながっていると考えられます。
工業所有権等の譲渡又は貸付にしても役務提供にしても、オリジナル性の高い無形資産や個別性の高い便益の提供というものは市場性がないことが多い。 それ故にグルーム内でそれらを取引する場合には対価がお手盛りになりやすく、利益調整に利用される危険性がある。 例えば、黒字会社が不相当に高額の利用料等を赤字会社に支払う行為や、黒字会社がノーハウなどを不相当に安い使用料で使用させる等は典型的な取引です。
今回の規則改正は、個別性の高い取引について、その内容と対価の算定根拠を明確ににしてくださいね、という改正だと理解されます。
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2.規則改正の理由を考える
これらの取引は実務上で問題になりやすい部分であり、税理士が申告書を作る場合や事前に相談を受ける場合に、取引対価が不相当に高額或いは低額にならないか、注意を喚起するところです。 不相当に高額(又は低額)な部分は、反対給付のない経済的利益の無償の供与に相当するとして法人税法上の「寄付金」の処理となります。(法人税法37条)
法人税実務を理解する上では会計と税法に違いがあることを理解することが肝要です。 会計上の「費用」と税務上の「損金」は概念が異なります。 寄付金は、会計上は利益を減らす費用ですが、法人税法上は所得を減らす損金には必ずしもなりません。 国、地方公共団体、特定の公益法人等に対する寄付金以外は原則的には課税所得を減算する損金にはなりません。(注1)(注2)
(注1) 法人の資本金、資本準備金、所得に応じて一定の損金算入が認められていますが、多くの中小企業の場合は少額にすぎません。
(注2) 100%グループ内法人間の譲渡や100%親子間の寄付行為については、別の規制がありますが、話が複雑になるのでここでは説明を省略します。
費用は正しい経営成績を導出するための会計上の概念であるのに対し、損金は課税所得(課税標準)を算出するための法人税法上の概念です。 所得を減らす(損金)は、課税の公平性を図るために客観性や確実性が求められ、また社会政策を実現するために誘導的な目的が加えられたものになっています。 イメージでいうなら費用をかなり狭めたものが損金です。
例えば、会計において手数料や利用料等を費用と処理すると利益は減少しますが、その中に寄付金となるような性格の支出が含まれている場合、その部分は、課税所得は減額されません。 全額を損金処理して課税所得を算出し法人税を納めていたところ、後日、税務調査の場面でその手数料や利用料が、利害関係のない第三者間取引ではありえないような価格である場合、不相当に高額すぎるとして高額な部分について寄付金の処分を受け、課税所得を増加再計算され追加税額が発生することがあります。 追徴税には加算税や利息に相当する延滞税が追加されます。しかも場合によっては何年分もさかのぼって・・・、そのような憂き目にあわないように注意しなければなりません。
改正法は、とかくあいまいになりやすい企業グループ間の個別性の高い取引について、取引内容と対価の算定根拠を書類として残させることにより、その取引が利害関係のない第三者間取引と比較して、通常ありえないように高額或いは低額な取引ではないかの判断をする際の材料にするためになされたもの。さらには事前に慎重な対価決定を促すためのものでもあると言うことができるのではないでしょうか。
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